第109章 幕間その陸:煉獄邸再び
「大海原さん、今日は本当にありがとうございました」
「あたしも、あんた達が少しでも元気になってくれてよかったわ」
汐は自分の今の嘘偽りない心を口にすると、千寿郎の顔に笑みが浮かんだ。
だが、次の瞬間、千寿郎の顔が少しだけ険しくなった。
「実は、あの時言いそびれたのですが、大海原さんに伝えておきたいことがありまして」
「伝えておきたいこと?」
「はい。先日、文献の修復をしていた時なのですが、気になる部分を見つけたんです」
千寿郎はそう言って、復元された文献の一部を、汐の前に突き出した。
「ほら、この部分を見てください」
千寿郎が指をさした場所には、少し滲んだ文字で【青い髪】と記されていた。
それを見た瞬間、汐は大きく目を見開いた。
「青い髪って、まさか」
「以前、兄上から青い髪の女性、ワダツミの子の事を少しだけ聞かされたので、もしやと思って調べたら――。だから今回、大海原さんを呼んだのは、この事を伝えるためでもあったんです」
「この文献って、確か戦国時代辺りに書かれたものよね。じゃあ、その時にもワダツミの子はいて、その時の鬼殺隊にいたってこと?」
思わぬところでワダツミの子の手掛かりが手に入ったものの、それはかえって謎を深めたように思えた。