第108章 幕間その陸:再開、そして勃発
それから数時間後。汐はげっそりとした表情で、山道をとぼとぼと歩いていた。
(お、思っていたよりもずっと、いや、遥かにすごかったわ・・・)
汐が見学した悲鳴嶼の修行というものは、彼女の想像をはるかに超えていた。
汐が見学した稽古は、狭霧山で汐が割った滝の何十倍もの大きさの滝に打たれた後、玄弥の様に、大岩を念仏を唱えながら押し動かし、それから岩が括り付けられた丸太を背負いながら、下から火であぶるというものだった。
甘露寺や伊黒の稽古も苛酷だったが、悲鳴嶼の稽古は、それを上回るどころか天を突き抜ける程の苛酷さを示していた。
(もうあれ、稽古なんて呼ばないわよ。苦行よ苦行。善逸が見たら、間違いなく精神が死ぬわね)
だが、汐が度肝を抜かれたのはその稽古方法だけではなかった。
(それに言っちゃ悪いけど、悲鳴嶼さん教え方へったくそ!みっちゃんや炭治郎も教え方下手だけど、悲鳴嶼さんは考えるより感じろ見たいな感じで、具体的なやり方全然教えてくれないんだもの)
柱とは言え、皆が皆教え方が旨いわけじゃないことを、汐はこの時改めて痛感した。そして、甘露寺とは異なり、(時々私情をはさむとはいえ)伊黒の教え方が上手かった事を知ることになった。
(はぁ、見てるだけなのにどっと疲れたわ。早く帰ってお風呂にでも入ろう)
汐は死人のような顔でそのまま山を下りた後、わき目も降らずに自分の屋敷に戻り、そのまま風呂を沸かした後、湯船につかりながら眠ってしまった。
その為、逆上せてしまい、使用人によって助け出されることになってしまうのだった。