第14章 二つの刃<肆>
「お前【赫灼(かくしゃく)の子】じゃねえか。こりゃあ縁起がいいなあ」
「いや、俺は炭十郎と葵枝の息子です」
「そういう意味じゃないでしょ、流れで」
見当違いの答えを返す炭治郎に、汐はすかさず突っ込む。
「赫灼の子というのは、赤みがかかった髪と目の色をした子供のことです。火の仕事をしている家にこのような子が生まれると、とても縁起がいいと言われているのですよ」
鋼鐵塚に変わって鉄火場がそう説明する。炭治郎はそれを知らなかったらしく、自分の髪をつまんでみていた。
「じゃあ、青い髪のあたしは何の子なの?」
ついでに汐も聞いてみると、鉄火場も鋼鐵塚も首を横に振った。
「申し訳ありません。自分にはわかりかねます」
「そもそも青い髪の人間なんて聞いたことねえよ」
鋼鐵塚は興味がないといったように言い放ち、再び鉄火場が木槌でたたく。このままではらちが明かないため、鱗滝は刀を見せるよう催促した。
二人の鍛冶師は二人にそれぞれの刀を手渡す。日輪刀は別名【色変わりの刀】ともいわれ、持ち主によって刀身の色が変わるという。
「さあさあ、刀を抜いてみな」
鋼鐵塚に促され、二人はゆっくりと鞘から刀を抜く。
すると、炭治郎の刀がみるみるうちに黒く染まっていった。
「おおっ!」
炭治郎が驚きの声を上げ、それを見た鋼鐵塚と鱗滝も目をみはった。
「くろっ!?」
「黒いな」
二人の話によると、このように漆黒の日輪刀はあまりみないらしく、当てが外れた鋼鐵塚は激しく取り乱していた。
しかも炭治郎が年齢を聞くと、齢三十七だという。年齢にそぐわない大人げない行動をとる彼に、鉄火場は容赦なく木槌を振るった。
「貴様・・・いい加減にしろよ。俺の頭を何度も何度もたたきやがって・・・何か恨みでもあるのか?」
「貴方の行動がいちいち幼稚すぎるのです。そのようなことだから、嫁が来ないのですよ」
鉄火場の容赦ない言葉に、鋼鐵塚はますます頭から湯気を噴き出した。