第14章 二つの刃<肆>
試験から十五日ほどたった後。
雲一つない晴天の下、汐は洗濯物を物干しにかけ一息ついたところだった。
道の向こうから、二人の人物がこちらに向かって歩いてきていた。
一人は江戸風鈴を下げた編み笠をかぶったひまわりのような羽織を纏った者。もう一人は南部風鈴を下げ、金盞花の羽織を纏った隣の者よりも背が低い者。
二人ともひょっとこの面をつけ、その背中には、大きなものを背負っている。
「炭治郎!炭治郎!!来たよ!あたしたちの刀!!」
汐が大声で呼ぶと、炭治郎はすぐさま外に出てくる。
「俺は鋼鐵塚という者だ。竈門炭治郎の刀を打ち持参した」
江戸風鈴の男は名を名乗り、炭治郎の前で足を止めた。
「お初にお目にかかります、皆様。自分は鉄火場焔(ほむら)と申します。|大海原汐殿の刀を打ち馳せ参じました」
南部風鈴の男も名を名乗り、汐の前で足を止める。
「あ、どうも。大海原汐です」
汐が名乗ると、鉄火場は深々と頭を下げる。それから汐が中に通そうとすると、隣では鋼鐵塚が座り込み刀の説明を始めてしまう。
困惑する二人に、鉄火場は小さくため息をついていった。
「申し訳ない。あれは人の話を全く聞かぬ唐変木なのです。しかし、こう人さまの家の前で座り込まれてはたまりませぬので」
そう言ったかと思うと、鉄火場は袂から小さな木槌を取り出すと、鋼鐵塚の頭を思い切り叩いた。
目の前で起きたとんでもない光景に、二人は目を点にしたまま固まる。これには流石の鋼鐵塚も話をやめ、頭を押さえて鉄火場を睨みつけた。
「おい貴様。人が話しているときに頭をたたくとはどういう了見だ?」
「どうもこうもありません。人さまの家の前でみっともなく座り込んで駄弁を弄する不届き物よりは、幾分かましかと」
怒りの声を上げる鋼鐵塚に対して、棘のある言葉を返す鉄火場。一触即発の事態が起こる寸前、その助け舟を出したのは鱗滝だった。
「相も変わらず仲が悪いことだ」
鱗滝の姿を認識した鉄火場は深々と頭を下げる。そして、鋼鐵塚の無礼を心からわびたのであった。
それから二人は小屋の中に通され、一通りの説明を受けた。
日輪刀。それは太陽に一番近い山でとれた【猩々緋砂鉄】と【猩々緋鉱石】でできた日の光を吸収する鉄でできたもの。
それを刀に打つのが鉄火場と鋼鐵塚の仕事だという。
すると、鋼鐵塚が突然炭治郎を見て驚いたように言った。