第108章 幕間その陸:再開、そして勃発
それから数分後。
「・・・・・」
腕を組み、微かに青筋を立てながら見下ろす悲鳴嶼の前で、汐と少年は縮こまっていた。
悲鳴嶼の体格の前では、二人はまるで小動物のようにも見えた。
「玄弥。感情を表に出すなとは言わないが、むやみやたらに人に絡むことはよせと言ったはずだ」
「はい・・・、すみません」
悲鳴嶼は、呆れた様子でそう言うと、玄弥と呼ばれた少年は、反論することなく素直に謝罪の言葉を口にした。
「それから、大海原。人を挑発するような事をしてはいけない。ましてや、君は女性なのだから、もう少し慎みある行動をするべきだ」
「・・・ごめんなさい」
落ち着いた、しかし威厳のある言葉に、流石の汐も反抗的に離れず、素直にその言葉を受け止めた。
「そして二人共。喧嘩をした後にするべきことは、わかるな?」
その言葉に二人は顔を見合わせると、互いに向き合って頭を下げた。
「悪かったな・・・」
「あたしも、ごめん」
二人で謝罪の言葉を口にして顔を上げれば、心なしか玄弥の顔が赤く染まっているように見えた。
「玄弥。私は彼女と話をする。お前は修行に戻れ」
「はい」
玄弥は短く返事をすると、そのまま汐の目を見ることなく、その場を立ち去った。