第107章 変わりゆくもの<肆>
「猗窩座殿!話してる途中なのに」
そう言って口を尖らせる童磨の傍らで、玉壺は鳴女に向かって声を掛けた。
「私と半天狗を、同じ場所へ飛ばしてくだされ」
「待ってくれ、じゃあ俺も・・・」
童磨が言い終わる前に、鳴女は琵琶を二度かき鳴らし、玉壺と半天狗を何処へと転送した。
残された童磨は、しばらく呆然としていたが、鳴女に向かって馴れ馴れしく声を掛けた。
「おーい、琵琶の君。もしよかったら、この後俺と」
「お断りします」
鳴女は童磨の誘いを瞬時に断ると、再び琵琶を鳴らした。すると童磨は、彼の住まいであろう場所にその身を置いていた。
「むうう、誰も彼もつれないなァ」
童磨は少し残念そうにそうぼやくと、向かいの襖がそっと開いて一人の人間が姿を現した。
「教祖様、信者の方がお見えです」
「ああ、本当かい。待たせてすまないね」
童磨はそう言うと、傍らにあった帽子を頭に乗せると、笑顔を張り付けながら声を掛けた。
「どうぞどうぞ、入って貰っておくれ」