第107章 変わりゆくもの<肆>
「いやぁ、しかしだよ、黒死牟殿。申し込んだところで、猗窩座殿は我らに勝てまいが、加えて俺に至っては猗窩座殿よりも後で鬼になり、早く出世したのだから、彼も内心穏やかではあるまい!わかってやってくれ」
童磨の言葉に、猗窩座は顔に青筋を浮かべながらも、固く口を閉ざしていた。
「それに、俺はわざと避けなかったんだよ。ちょっとした戯れさ。こういう風にして仲良くなっていくものだよ。上に立つ者は、下の者にそう目くじら立てず、ゆとりをもって――」
「猗窩座」
童磨の言葉を遮るように、黒死牟は鋭い声で言い放った。
「私の・・・言いたいことは・・・わかったか」
「わかった」
黒死牟の三対の目が猗窩座を鋭く穿ち、猗窩座は静かに答え、鋭い視線を彼に向けながら言い放った。
「俺は必ず、お前を殺す」
「そうか・・・、励む・・・ことだ・・・」
黒死牟はそれだけを告げると、瞬く間にその姿を消した。
「さよなら黒死牟殿。さよなら!」
童磨は友人を見送るような口調で言うと、少し困ったような表情で顔を上げた。
「何だか俺は会話に入れて貰えなかったような気がするのだが、考えすぎだよな、猗窩座殿」
しかし猗窩座は童磨の言葉に答えることなく、軽やかに城の壁を伝い何処へと去って行った。