第106章 変わりゆくもの<参>
『何故君はそこまでできる?君はまだ幼い。幼い子供は親に甘えるものだと、私は教えられた。だが、今の君の話ではそれには当てはまらない。わからない、わからない。どうしてなんだ?』
困惑する少女を、男児はそっと見つめ、赤みがかかった瞳が、静かに彼女の姿を映した。
彼女が何かを言おうと口を開いた、その時だった。
『――』
不意に誰かの声がして、男児は籠を抱えたまま振り返った。そこには、彼とよく似た顔立ちの、耳に飾りをつけた一人の男が立っていた。
『とうさん!』
男児は嬉しそうにそう言うと、そのま男の元に駆け寄った。彼は、そんな男児の頭を穏やかな表情で優しくなでた。
『今のは、君の名前か?』
『うん、そうだよ。おれのなまえは・・・』
男児は彼女と向き合うと、太陽のような笑顔で、歯切れのよい声で言った。男と同じ赤い髪が、小さく風で揺れる。
――俺の名前は、炭治郎。竈門炭治郎っていうんだ・・・・