第105章 変わりゆくもの<弐>
「いっ、いたい・・・っ!!」
汐は思わず頭を抱えてしゃがみ込み、それを見た善逸は慌てて汐の傍に駆け寄った。
「汐ちゃん、大丈夫!?しっかり、しっかりするんだ!!」
汐の"音"は、これ以上ない程乱れており、顔色も悪く汗が吹き出していた。その尋常じゃない様子に、流石の伊之助も閉口し目を見開いた。
「お、おい。そいつ、一体どうしたんだ?」
伊之助が思わず尋ねるが、善逸は「後で話す」とだけ言うと、そのまま汐を連れて伊之助の病室を後にした。
残された伊之助は、呆然と二人が去った方向を見つめていた。
その後、汐は運よくアオイと会うことができ、善逸は汐を連れ出してしまった事を深く謝罪すると、彼女を部屋へ連れて行ってくれるように頼んだ。
アオイは何か言いたげな顔をしたが、顔色が悪い汐のいる前で騒ぎを起こすわけにもいかず、そのまま汐を連れて病室へと戻った。
「いいですか、今日はもう絶対に出歩いたりしないでくださいね」
アオイはしっかりと釘を刺すと、目覚めたばかりの伊之助の元へと駆け出していった。そんな彼女の背中を見つめることなく、汐の意識は、深い闇の中へと沈んでいくのだった。