第105章 変わりゆくもの<弐>
一方汐は、伊之助の顔をじっと見つめており、その視線に気づいた伊之助が汐の方を向いた。
「なんだお前、って、歌女じゃねえか!畜生!俺が一番最初に目覚めたと思ったのに、先を越されちまったぜ」
「いや、一番最初に起きたのは俺だからね。お前が起きるよりも二か月近く前に起きてるからね」
善逸の冷静な突っ込みに、伊之助は憤慨して頭から湯気を出すが、ふと違和感に気づき顔を上げた。
「お前、なんか変だぜ。いつもならギャースカすぐに喚くのに、今日にいたっては静かじゃねえか。気味悪いぜ」
「おい、そんな言い方はないだろ?今汐ちゃんはちょっと取り込んでて・・・」
だが、善逸が言い終わる前に、汐はそっと伊之助の隣に立つと、その翡翠色の目をじっと見つめた。
「あなたは、私を知っているのですか?」
「・・・はぁ?」
汐の言葉の意味が分からず、伊之助は顔を少し歪ませるが、汐の今まで聞いたことのない口調に鳥肌が立った。
「お前、本当に歌女か?なんだその気持ち悪い喋り方」
「だから、話を聞けよ!今汐ちゃんは少し・・・」
善逸が慌てて伊之助を窘めようとしたその時、突然汐の頭に激痛が走った。