第103章 決着<肆>
一方、別の場所では。
「ふぅん、そうか。ふぅん。陸ね。一番下だ、上弦の。陸とはいえ、上弦を倒したわけだ。実にめでたいことだな。陸だがな。褒めてやってもいい」
おそらく宇髄達の援護に来たであろう、蛇柱・伊黒小芭内は、傷ついている宇髄に対してネチネチと褒めているのか貶しているのか分からない言い方をしていた。
その態度に宇髄は呆れ、三人の妻たちはそれぞれ顔をしかめながら伊黒を睨みつけていた。
「いや、お前に褒められても別に・・・」
「そうですよ!」
「随分遅かったですね」
「おっ、おっ、遅いんですよそもそも来るのが!!おっそいの!!」
あまりの言い草に抗議する須磨とまきをに、鏑丸は鎌首を擡げ威嚇の声を上げた。
それにたいそう驚き、須磨は宇髄にしがみ付いてしまい、彼はその痛みに悲鳴を上げた。
「左腕は使い物にならず、左目も失ってどうするつもりだ?たかが上弦の陸との戦いで。復帰までどれだけかかる。その間の穴埋めは、誰がするんだ」
相も変わらずネチネチと責め立てる伊黒に、宇髄は静かに首を横に振った。
「俺は引退する。流石にもう戦えねぇよ。お館様も許してくださるだろう」
宇髄のこの言葉に、伊黒は目を剥くと先ほどよりも棘のある声色で言い放った。
「ふざけるなよ、俺は許さない。ただでさえ若手が育たずに死にすぎるから、柱は煉獄が抜けたあと空白のまま。お前程度でもいないよりはマシだ。死ぬまで戦え」
しかし宇髄は再度首を横に振ると、口元に笑みを浮かべながらはっきりとした口調で告げた。
「いいや若手は育ってるぜ、確実に。お前の大嫌いな若手がな」
宇髄の言葉に、伊黒は何かを察したように大きく目を見開き、微かだが瞼を震わせた。
「おい、まさか。生き残ったのか?この戦いで――。竈門炭治郎と、大海原汐が」
「ああ。しかも上弦の鬼に止めを刺したもの、あいつらだぜ」
凄いだろ?というかのようにすごむ宇髄をしり目に、伊黒はその事実を理解するまで少しの時間を要するのだった。