第103章 決着<肆>
「さて、あたし達も戻りましょうか。どうせ善逸がまた喚き散らしているだろうし」
「そうだな。帰ろうか、皆の所へ」
頷きあう二人を、禰豆子はすぐに抱えると善逸達のいる場所へと戻った。戻ってみれば案の定、善逸は痛い痛いと泣き喚き、目を覚ました伊之助は喚く善逸に力なくうるさいと言い続けていた。
炭治郎は汐と共にそんな彼等をそっと抱きしめた。温かな体温は、自分たちが生きている何よりの証になった。
汐は炭治郎の胸に顔をうずめながら、規則正しく脈打つ心音を聞いていた。
自分が生きている以上に、彼が生きていることが何よりも嬉しかった。守れたことが嬉しかった。
ゆっくりと薄れていく意識の中、汐の脳裏に師範である甘露寺の言葉が蘇る。
『女の子が本当に強くなれるのは、大切な人を守りたいという気持ちだから・・・』
(ああ、そうか。そうだったんだ。みっちゃんや鯉夏さんに指摘されるずっと前から。そう、初めて出会ってあの目を見た時から、あたしは――)
――竈門炭治郎が、好きなんだ。仲間としてだけじゃなく、もっと特別な意味で。
だからこそ、彼の幸せを心から願った。心の底から守りたいと思った。
命と誇りと、そして笑顔を。
「炭治郎・・・」
段々と迫ってくる闇の中、汐は重い口を必死で動かし言葉を紡いだ。
「・・・・・す・・・き・・・」
その小さな言葉を最後に、彼女の意識は闇の中に吸い込まれていった。