第102章 決着<参>
「ずっと一緒にいるんだから!!何回生まれ変わっても、アタシはお兄ちゃんの妹になる、絶対に!!アタシを嫌わないで!!叱らないで!!一人にしないで!!置いてったら許さないわよ!!」
泣きじゃくる妹を、妓夫太郎は振り落とすことも振り払うこともしなかった。否、出来なかった。そんなこと、出来るはずもなかった。
「わあああん!!ずっと一緒にいるんだもん。酷いひどい!!約束したの覚えてないの!?忘れちゃったのォ!!」
梅の約束という言葉を聞いたとき、妓夫太郎の脳裏にかつての記憶がよみがえった。
それはまだ、二人が今よりずっと幼かったころ。降りしきる雪の中を、藁にくるまって寒さをしのぎながら、妓夫太郎が梅に行ってくれた言葉だった。
『俺たちは二人なら最強だ。寒いのも腹ペコなのも全然へっちゃら。約束する、ずっと一緒だ。絶対離れない。ほら梅、もう何も怖くないだろう?』
寒さと空腹で泣く梅を、妓夫太郎はずっと励ましてくれた。何もなくても、兄が傍にいるだけで他には何もいらなかった。
嬉しかった。怖くなんてなかった。その約束が、梅をずっと支えてくれていた。
「わあああん!!うわあああん!!」
ずっと泣き続ける梅をなだめながら、妓夫太郎はそのまま歩きだした。いつの間にか彼の両目からは数字が消え、歩くたびに彼もまた人に戻っていった。
そして二人はそのまま、地獄の業火に飲まれるように消えていった。