第13章 二つの刃<参>
「炭治郎~、生きてる?」
「な、なんとか・・・」
その後、参加者たは隊服を受け取るとそれぞれの帰路に就いた。七日間の生存競争を生き残った二人の疲労はすさまじく、特に炭治郎は支えがなければまともに歩けない状態だった。そんな彼の肩を、汐は担いで必死に前に進む。
そんな中、突然炭治郎が口を開いた。
「なあ、汐。俺、ちゃんと前に進めてるかな?」
「いきなりどうしたの?」
「鬼を人に戻す方法、ちゃんと聞けなかった。どの鬼もまともに話を聞けなかった。このまま、禰豆子を助ける方法が見つからなかったらどうしよう・・・」
珍しく弱音を吐く炭治郎に、汐は小さくため息をついた。
「疲れてるといろいろ悪いことばっかり考えるのよ。今はさっさと帰って鱗滝さんに元気な顔を見せる。それからおいしいものを食べてゆっくり寝る。あんたがするべきことはそれ。そのあとゆっくり考えればいいじゃない」
「でも・・・」
「そりゃあ、あんたの気持ちもわかるけど、あんたが駄目になることを禰豆子が望むわけないでしょ。あの子のことを本当に思うなら、まず自分を大事にしないと。まあ、あたしが言えた義理じゃあないけどさ。あたしもさんざん無理して周りに迷惑をかけたしね」
そう言って汐は自嘲気味に笑う。炭治郎は呆然と汐の横顔を見つめた。夕日に照らされた彼女の横顔、そして彼女から香る優しい潮の匂い。
思わず涙がこぼれそうになった彼は、それに耐えるように目をつぶった。
結局鱗滝の小屋へ戻ってきたのは日が暮れた後だった。ついたとたん、疲労が一気に襲い頭がぼんやりとしてくる。
すると、突然小屋の扉がガタガタと揺れたかと思うと、すさまじい音を立てて扉が吹き飛んだ。
唖然としている二人の前に現れたのは
――眠っていたはずの禰豆子だった。