第102章 決着<参>
炭治郎の優しい声が崩れかかった堕姫の耳に届いた瞬間、慟哭があたり中に響き渡った。
「うわあああん!!うるさいんだよォ!!アタシに説教すんじゃないわよ!糞ガキが、向こう行けぇ!どっか行けぇ!!」
涙と共に感情が堰を切ったようにあふれ出し、堕姫は心の中のものを全て吐き出すように泣き叫んだ。
「悔しいよう、悔しいよう!何とかしてよお兄ちゃあん!!死にたくないよォ、死にたくない!お兄っ・・・!」
しかし堕姫が兄を呼ぶ声は最後まで紡がれることなく、塵となって風に乗り流れていった。
「梅!!」
その時、妓夫太郎の口から知らない名前が飛び出した。その言葉に発した彼自身さえ、驚きで目を見開いていた。
(梅?そうだ。思い出した・・・。俺の妹の名前は"梅"だった。"堕姫"じゃねえ、酷い名前だ)
それは、妓夫太郎が失っていた人間だったころの記憶。役所名である名前がそのまま付けられた彼とは異なり、妹には本当の名前があった。
だが、その名前の由来はあまりにも酷く、花の名前である梅ではなく、死んだ彼らの母親の病名から名付けられたものだった。