第101章 決着<弐>
「・・・よぉ。お前も生きていたんだな」
「何とかね。禰豆子のお陰であたしの毒も消えたし、とりあえずは、終わったみたい」
そう言って汐は改めて宇髄の身体を見て、顔をしかめた。毒は消えたとはいえ傷は治らず、彼の左腕は手のひらからざっくりと縦に裂かれるように斬られており、腕の形をしていなかった。
「あんた、その腕・・・」
「ああ。辛うじて残っちゃいるが、これじゃあもう刀を握んのは無理だな」
「それって、まさか・・・」
「・・・ああ、俺は柱を引退する」
宇髄の力ない声に、汐は身体を震わせた。命があるとはいえ、煉獄に続き柱が二人も鬼殺隊からいなくなる。
それは大きな戦力を失うことを意味していた。
「・・・そう」
「ほお、意外な反応だな。もっと怒ったり、悲しんだりするかと思ったぜ」
「今更そんなことしたって、あんたが引退を撤回する訳ないでしょ?見栄っ張りで自意識過剰なあんたがそう決めたってことは、よっぽどのことだと思うし」
「オメーの変な物分かりの良さが時々怖ぇよ」
宇髄は小さくため息を吐くと、雲が晴れた空を見上げた。腹立たしい程の綺麗な満月が、更地と化した吉原を淡く照らしていく。
「・・・戦線からは退くが、ワダツミの子と大海原家の事は、これからも調べていくつもりだ。もしも何か気になることがあったなら、いつでも俺の所へ来い」
「え?」
「柱を引退したからって、この宇髄天元が何もせず隠居なんかするわけねえだろ。そんな地味な事、まっぴらごめんだからな」
そう言ってにっかりと笑う宇髄に、汐は困ったように笑うと、彼と向き合い頭を下げた。