第101章 決着<弐>
(そうだ、汐が・・・、汐が新しいウタカタを放って、鬼の術を相殺して――)
「そうだ、汐!汐は何処だ!?」
炭治郎は身体を起こすと汐の姿を捜して顔を動かした。するとすぐそばで膝をついている汐の姿を見つけ、重い体を引きずりながら駆け寄った。
「汐、汐!!しっかりしろ!!頼む、目を開けてくれ・・・!!」
固く目を閉じたままの汐を揺さぶり、炭治郎はすがる思いで何度も名を呼んだ。湧き上がってくる嫌な思いを振り払うように、あふれ出そうな涙をこらえるように、炭治郎は顔を歪ませながら必死で声を張り上げた。
すると
「う・・・ん・・・」
汐の口から小さな声が漏れ、瞼が細かく震えたかと思うと彼女はゆっくりと目を開いた。
髪と同じ色の瞳が炭治郎の姿を映した時、汐はゆっくりと口を動かした。
「たん・・・じろ・・・う?」
汐が掠れたか細い声で炭治郎の名を呼ぶと、炭治郎の目にみるみる涙がたまり、そして。
――汐の身体を強く抱きしめた。
「!?」
汐が驚き硬直すると、炭治郎は汐の存在を確かめるかのように、強く強く抱きしめた。
「よかった・・・っ・・・!お前・・・っ、生きて・・・っ」
炭治郎はいろいろな思いや感情が混ざり合い、言葉すらうまく出てこなかった。そんな彼の熱を身体に感じながら、汐は自分が生きていることと炭治郎が生きていることを感じ、両手を背中に回して同じように抱きしめた。
(炭治郎・・・生きてた・・・!炭治郎が、生きていた!!)
二人は互いの存在を確かめるように深く、深く抱きしめあっていた。すると、
「むーーー」
いつの間にか禰豆子が二人の間に入り、蚊帳の外にされたことを怒っているのか頬を膨らませていた。
「禰豆子・・・、あんたも無事だったのね。よかった・・・!」
汐はそう言って禰豆子を抱きしめると、あの時酷い目に遭わせてごめんと謝った。
すると禰豆子は、気にしないでというかのように汐の頭を優しくなでた。