第13章 二つの刃<参>
七日目の早朝。二人は満身創痍になりながらも、ようやく藤の花が咲き乱れる始まりの場所へたどり着いた。
そこには既に他の参加者たちが集まっていたが、その数に汐と炭治郎は驚いた。
(たったの、五人?)
そう。その場にいたのは汐たちを含めて五人しかいなかった。あの夜に炭治郎が命がけで助けた参加者も、その姿がなかった。
落ち込む炭治郎の背中を、汐は叩く。少しでも、彼に悲しい眼をさせたくなかったからだ。
汐達以外に生き残った参加者は、蝶と戯れる同じく蝶の髪飾りをした少女。(驚くことに、傷も汚れも一切なかった)
不吉な言葉を呟きながら震える、黄色い髪の少年。目つきが鋭く、特徴的な髪形をした少年だった。
「おかえりなさいませ」
「おめでとうございます、ご無事で何よりです」
最初の夜に選別試験の説明をした二人の少女がどこからか現れた。
正直なところ無事とは言い難いが、今はそのような軽口を叩く余裕などなかった。
「で?俺はこれからどうすりゃいい?刀は?」
ただ、特徴的な髪型の少年はそう二人に問いかけた。
しかし二人の少女はそれには答えず、読めない表情のまま淡々と話し出した。
「まずは隊服を支給させて戴きます。体の寸法を測り、その後は階級を刻ませていただきます」
「階級は十段階ございます。甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸。今現在皆様は、一番下の癸でございます」
少女たちが告げた階級に、汐は聞き覚えがあった。確か、暦を表す【十干】と呼ばれるものだったっけ?
「刀は?」
先ほどの少年が語気を強めて尋ねる。さっきからうるさいなと汐はわずかに顔をしかめた。
「本日中に玉鋼を選んでいただき、刀が出来上がるまで十日から十五日となります」
少年は自分の目論見が外れたのか、いらいらとした様子で頭を振る。
「更に、今からは【鎹鴉】をつけさせていただきます」
銀髪の少女が両手を打ち鳴らすと、空から鴉が舞い降りそれぞれの肩や腕に止まる。
一人だけ、黄色の髪の少年だけはなぜか雀だったが。
「鎹鴉は、主に連絡用の鴉でございます」
汐の腕に止まった鴉は、間延びした声でゆったりと鳴いた。