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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第2章 嵐の前の静けさ<壱>


入り江には布と木で作られた簡素な小屋があった。おそらく、海賊たちが作った根城だろう。
汐は臆することなく根城へ向かう。

「ん?なんだぁおめえは?」
見張りの男が汐に気づき、目つきを鋭くさせながら近づいてきた。だが、相手が子供だと、嘲るような視線に変わる。
「ここはお前みたい餓鬼が来るようなところじゃねえ。怪我したくなきゃさっさと・・・」
「ぐだぐだ言うのは性に合わないから単刀直入に言うけど、あんたら今すぐここから出て行って」

言葉を遮り、汐は男へと言い放つ。その声と瞳に、迷いや恐れは一切なかった。
男の顔がみるみる歪み、こめかみがぴくぴくと脈打つ。

――ああ、なんて醜い、汚い眼なんだろう・・・

「てめえ、今なんて言った?餓鬼が大人になめた口きいてんじゃねえぞ?」
「おとなしく出て行ってくれれば警察には言わない。でもそうじゃない場合は・・・わかるよね?」
男の顔が更にひどくゆがみ、皮膚はみるみる赤くなる。全身が震え、今にも沸騰しそうだ。

「て、てめぇ・・・。一度ならぬ二度まで・・・それ以上言ったらこっちも只じゃ・・・」
「いいからさっさとここから出て行けって言ってんだよ。言っている意味わかんないの愚図」
「こ、この餓鬼ィィィイイ!!!」

男が言い終わる前に、汐の低い声が小さく響く。その言葉についに切れた男が、奇声を上げながら殴りかかってきた。

だが、それよりも速く、汐の拳が男の鳩尾に食い込んでいた。
唾を吐き出しながら吹き飛ぶ男。すると、異変を察知したのか仲間の男たちが、ぞろぞろと汐の前に姿を表した。
皆武器を持ち下卑た表情を浮かべている。その眼は、ギラギラと欲を孕んでいて、汐の胸を悪くさせた。

――駄目だ。汚すぎて吐き気がする

汐は小さく舌打ちをすると、まず短刀で切りかかってきた男の手を思い切り蹴りあげた。
怯んだ男にそのまま再び鳩尾に入れた後、今度は背後から掴み掛ってきた男の手をつかみ、捻りながら放り投げる。
その斜線上にいた仲間ごと、男は無様に倒れこんだ。

「こ、この餓鬼強ぇぞ!くそっ、あれを使え!」

主犯格と思われる男が仲間に指示を出す。すると仲間の一人が岩陰に隠してあった何かを持ち出してきた。

そこには、血走った目で唸り声を上げる4匹の野犬が入った檻があった。
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