第100章 決着<壱>
斬り落とされた頸はごろごろと地面を毬の様に転がり、何の導きか兄妹が向かい合うようにして止まった。
一瞬、時が止まり静寂が訪れる。その静寂を破ったのは、喜びに満ちた甲高い声だった。
「斬った!?斬った!!斬った!!キャーーーーッ」
その声は、屋根の上から戦況を見ていた宇髄の妻の一人、須磨のものだった。
「斬りましたよ雛鶴さん!草葉の影から見てください!!」
須磨は涙を流しながら雛鶴に抱き着くが、その言葉は本来死んだ者に対してつかわれるものであるため、健在である雛鶴への言葉としてはふさわしくない。
まきをはそれを指摘しつつ、須磨の頭を平手でたたいた。
ところが、雛鶴は奇妙な違和感を感じて目を見開いた。炭治郎と汐は、毒が回っているせいかそのまま動かない。
そんな二人に宇髄が何かを叫んでいるようだが、よく聞こえない。しかしその表情と口の動きが、ただ事じゃないことを物語っていた。
「逃げろーーーーーッ!!!!」
宇髄が叫ぶと同時に、頸を失った妓夫太郎の身体から、全方向に向かって血の刃が放出された。
それは炭治郎と汐に首を斬られる直前、最後のあがきで放った血鬼術だった。