第100章 決着<壱>
真っ赤な血の刃が嵐となり、その場にいるもの全員に襲い掛かろうとしたとき、炭治郎を押しのける青い影があった。
汐がそのまま前に飛び出し、刃の嵐の前に立ちはだかった。
何をしているんだ。逃げろ、逃げろ!
炭治郎が心の中で叫ぶが、汐の耳には届かない。汐自身も、聞こえるのは自分の心臓の音と、嵐以外は目にも耳にも入らなかった。
(どうする、どうする!?あれを喰らえばこの場にいる全員お陀仏だ。爆砕歌じゃ防ぎきれないし、狂瀾怒濤でも無理だ。回転する刃を何とかしなければ・・・。回転、回転・・・。回【転】・・・)
その瞬間。襲い来る刃の嵐が急速に遅くなり、細部まではっきりと見えるようになった。それと同時に、汐は顔に焼けるような熱を感じた。
――ウタカタ 伍ノ旋律・転調――
――爆塵歌(ばくじんか)!!!
「あああああああああああああ!!!!!」
汐の口から、否全身から放たれた声の竜巻が、刃の嵐を巻き込み砕いていく。その反動はすさまじく、炭治郎、宇髄、善逸、伊之助、そして宇髄の妻たちは、襲い来る衝撃に耐えようと、固く目を瞑った。
やがて声の竜巻は全ての刃を砕くと、そのまま風に乗って掻き消えていった。
辺りには今度個、本当の静寂が訪れようとしていた。