第100章 決着<壱>
(畜生、こんなガキ共に・・・!まずい、斬られるぞオオオ!!)
滑りだす刃に妓夫太郎は焦るが、彼にはもう一人、妹の堕姫がいる。彼女の頸がつながっている限り、彼が死ぬことはない。
そうなれば優先するべきは、堕姫の頸の死守だ。
「アンタがアタシの頸を斬るより早く、アタシがアンタを細切れにするわ!!」
堕姫の帯が持ち上がり、善逸をバラバラに引き裂こうと伸ばしたその瞬間。
バラバラになったのは善逸ではなく、帯の方だった。
何が起こったのか分からず堕姫が首を動かすと、そこには息絶えたはずの伊之助が刀を振りかぶって向かってくる姿があった。
(何でよ!?コイツ、お兄ちゃんが心臓を刺したのに!?)
伊之助の左胸からは血が流れだしているのが見えているため、刺したことは間違いはない。それなのに何故生きているのか、何故動けるのか。混乱する堕姫に、伊之助は濁った声で叫んだ。
「俺の体の柔らかさを見くびんじゃね゙ぇ゙!!内臓の位置をズラすなんざお茶の子さい゙さい゙だぜ!!険しい山で育った俺に゙は、毒も効かね゙ぇ゙!!」
しかし伊之助の口からは血があふれ、毛皮を真紅に染めていく。それでも彼は二本の刀を善逸とは逆方向から堕姫の頸へと押し当てた。
そのまま渾身の力を込めて、ねじ切る腹だ。
「「「アアアアアアアア」」」
「ガッ、ア゙ア゙ア゙ア゙ッ」
四つの咆哮が町中に響き渡り、それぞれの刃が鬼の頸をすべる。堕姫は焦りながら兄に助けを求め、妓夫太郎もなんとか回避しようと血鬼術を放とうと試みた。
しかし、それよりも速く刃は遂に頸を穿ち――
――二つの頸が弧を描いて、同時に空を舞った。