第100章 決着<壱>
(なんだ?額の痣が・・・)
「ガアアアアア!!!」
炭治郎の口から獣のような咆哮が上がり、その気迫に押されて妓夫太郎の全身に鳥肌が立った。
これはまずい、離れなければと本能が警告した。
だが、炭治郎の顎を突き刺している鎌はいくら力を込めても抜けず、妓夫太郎は汐に噛み砕かれはしたものの、まだ残っているもう一本の鎌を振り上げた、その時だった。
突如青色の閃光が迸ったかと思うと、振り上げた妓夫太郎の腕に僅かな衝撃が走った。思わず目を滑らせると、そこには自分の腕にしっかりと鎬を食い込ませる淡い青色の一本の刀があった。
「忘れモン、だぜ・・・」
遠くには息も絶え絶えの宇髄が、腕を振り下ろしたままの姿勢でこちらを見ているのが目に入った。だが、刀が刺さった程度で鬼である彼の肉体がどうなるということでもない。
しかしそれは、刺さったままであったなら、ということだった。
妓夫太郎が気を取られていた僅かな間に、真っ青な影が滑り込んだ。目を凝らせば、そこには頭から血を流し、口からも血を溢れさせていた汐がおり、己の手のひらで刀を押し込んだ。
刀が滑り、妓夫太郎の腕と刀が共に暗闇の中へ吸い込まれていった。
(何故だ、何故だ!?猛毒を受けているんだぞ!?このガキも、この女も何故死なない!?)
驚く妓夫太郎に、汐はにやりと笑った後、炭治郎の刀を両手で握りしめた。
(まだよ、まだ死なないわ。毒が回り切って死ぬまでの僅かな時間に、あたしは、あたし達はお前等を必ず倒す!!)
汐の力も加わり、炭治郎の漆黒の刃が妓夫太郎の頸の半分にまで到達した。だがそれでも、妓夫太郎は何とか筋肉を強張らせそれを防ごうとした。