第99章 役者は揃った<肆>
「伊之助ーーーッ!!!」
炭治郎の悲鳴が響き渡り、伊之助は真っ赤な鮮血を吹き出しながら力なく倒れ伏した。その隙に妓夫太郎は堕姫の頸を取り返し、身体の元へ戻っていった。
(なんでアイツがここに・・・、汐と宇髄さんは・・・!!)
炭治郎はすぐに下て戦っていたはずの汐と宇髄の方に顔を向けた。
そこには、全身から夥しい量の血を流してうつ伏せに倒れている宇髄と、同じく全身から血を流して蹲っている汐の姿があった。
その悲惨極まりない光景に、炭治郎の体が強張った。
「炭治郎、危ない!!」
固まってしまった炭治郎の耳に、善逸の鋭い声が突き刺さった。慌てて目を見開けば、眼前には堕姫の帯がすぐそこまで迫っていた。
(しまっ・・・)
そんな炭治郎を庇うように善逸が前に飛び出し、炭治郎はそのまま屋根の上から成す術もなく落下していった。
(ああ、ああ!!みんな、ごめん・・・。禰豆子・・・、汐・・・)
自分と一緒に落ちる瓦礫のかけらを最後に見て、炭治郎の意識は闇の中に溶けていった。