第99章 役者は揃った<肆>
一方、宇髄の刀が妓夫太郎の頸に迫る中、妓夫太郎は血の刃を真横に放つと、汐との延長線上に立ち、そのまま自分の両耳を斬り落とした。
「!?」
その行動に驚いた汐は、足元を滑らせ体勢を崩してしまった。それと同時に妓夫太郎は歌から解放され、振り返ると宇髄の左腕に向かって鎌を振りぬいた。
その刃は宇髄の左腕を縦に大きくざっくりと斬り裂いた。
目を見開く宇髄に、血の刃は容赦なく彼を襲い、背中をいくつも切り刻んだ。
「宇髄さん!!!」
汐の叫び声が木霊すると同時に、血の刃が弧を描きながらこちらに向かってきていた。
伍ノ旋律――
――爆砕歌!!!
爆砕歌の衝撃がギリギリで刃を吹き飛ばすも、零距離で放った汐はその反動で、瓦礫の中へ砲弾のように飛ばされてしまった。
それを見た妓夫太郎は、すぐさま踵を返し堕姫の頸を持って走る伊之助に音もなく近づいた。
そして、その猛毒の刃は伊之助の左胸を容赦なく貫いた。