第98章 役者は揃った<参>
宇髄が刀を振るうと同時に、炭治郎も慌てて刀を振り上げた。背中の傷が疼き力が抜けそうになるが気力を振り絞り、刃を振るう。
二本の刃が妓夫太郎の頸に届きそうになった刹那。金属同士がぶつかり合う音が響いた。
宇髄と炭治郎が目を見開けば、そこには二対の鎌でそれぞれの斬撃を受け止めた妓夫太郎の姿があった。
「お前らが俺の頸を斬るなんて、無理な話なんだよなあ」
炭治郎の刀を受け止めていた鎌が肉のように盛り上がり、刃を取り込んだ。炭治郎は慌てて引こうと腕に力を込めるが、半分以上取り込まれてしまった刀は、どれだけ力を込めてもびくともしなかった。
「炭治郎!!」
後方から汐の叫ぶ声が聞こえ、炭治郎を救おうと宇髄がもう一本の刀を頸に向かって振り上げた。だが、妓夫太郎は頸をぐるりと反対側にねじると、その刃にかみつき動きを止めた。
(首を真後ろにぶん回すんじゃねぇよ!バカタレェ!!)
刀を封じられた炭治郎と宇髄をみて、妓夫太郎は口元を再び歪ませると腕から再び血が刃のように飛び出した。
(またアレか!)
「竈門、踏ん張れ!!」
先程見た、腕を回さず斬撃を飛ばす血鬼術が来ると踏んだ宇髄は、そう叫び瓦が砕ける程強く踏み込んだ。
それと同時に雛鶴が炭治郎の身体をしっかりつかみ、宇髄はそのまま妓夫太郎ごと地面に向かって身を投げた。
「大海原、よけろーー!!」
宇髄の声と同時に、汐と炭治郎を斬撃の竜巻が襲った。竜巻は汐のいた場所を正確に抉り、炭治郎のすぐ足の下を削り取るとはるか上空へと飛んでいった。