第96章 役者は揃った<壱>
「あたし、さっき派手男にあたしにできることは何もないって言われたの。そして実際にその通りだと思った。あたしじゃ禰豆子を何とかできなかったし、自分ひとりで突っ走って大勢の人間に迷惑をかけた。正直のところ、今のあたしじゃアイツらの足手纏いなのはわかっている」
汐の淡々とした言葉が炭治郎の胸に突き刺さり、彼は大きく顔を歪ませた。そんなことはない。汐のせいなんかじゃない。そんなことを言おうとして口を開いた炭治郎の言葉を、汐が遮るように言った。
「けれど、このまま何もせずに尻尾を巻いて逃げ出すのだけは絶対に嫌。あんな連中に屈するなんざ、死んでもごめんだわ!だからお願い、あたしに逃げろなんて言わないで。来るなって言わないで。あたしもあんた達と一緒に、最後まで戦わせて!!」
汐は振り返り、炭治郎の目をしっかり見据えて言った。匂いをかがなくてもわかる。その眼には確かな決意が宿っていた。
炭治郎は何かを言いかけて口を開いたが、それを閉じると汐の目を見据えてうなずいた。
「勿論だ。俺の方もまだ動ける。一緒に戦おう、汐!」
皆で戦い抜く!最後まで!!
二人は頷きあうと、禰豆子に必ず帰ると誓い、戦いの渦中へと戻っていくのだった。