第94章 バケモノ<参>
俯く汐に宇髄は再びため息を吐くと――
手を振り上げその手刀を汐の頭に叩きつけた。
「いっ・・・たあ・・・!!なにすんのよっ!!」
汐は走った衝撃と痛みに呻き、頭を抑えながら宇髄を睨みつけた。
「戯け。お前が無茶をしたせいで迷惑する連中がいるのがわかんねえのか?自分ひとりで自己完結してんじゃねえって俺に派手に啖呵を切ったのはお前だろうに、言ってることとやってることが全然違うだろうが阿呆」
彼の言葉に、汐は先ほど殺意におぼれそうになり自分の限界を見誤ったことを思い出した。
禰豆子が居なければ、あのまま鬼に全身をズタズタにされていただろう。そして、自分ひとりが突っ走ったせいで禰豆子をあんな目に遭わせてしまった事に、汐は心から悔やんだ。
「落ち込んでいる場合じゃねえぞ、癇癪娘。まだ俺たちにはやることがごまんとあるんだ。そんな暇があるならさっさと立て」
「・・・そうね。って、今あんたあたしの事癇癪娘って言った!?騒音より酷いことになってるじゃない!!」
「うるせー、耳元で騒ぐんじゃねえよ。それとも騒音阿呆娘の方がいいか?」
「あんた絶対、いつかぶっ飛ばしてやるからね・・・」
青筋を立てながら自分を睨みつける汐に、宇髄の口元が微かに緩んだ。
その時だった。