第94章 バケモノ<参>
(ごめん・・・ごめんな二人とも。戦わせてしまって・・・!!二人とも痛かっただろう、苦しかっただろう・・・!)
「禰豆子、禰豆子!!ごめんな。でも大丈夫だ。兄ちゃんが誰も傷つけさせないから。眠るんだ禰豆子、眠って回復するんだ、禰豆子!!」
炭治郎は禰豆子の名を何度も呼び続けた。しかし禰豆子はそれが聞こえていないのか、強く踏み込むと炭治郎ごと天井を突き破っていった。
「炭治郎!禰豆子!」
汐もあわてて二人の後を追い、穴の開いた天井に向かって飛び込んだ。
上の階では突然現れた闖入者に、人々は驚き逃げ惑った。
「禰豆・・・子!!眠るんだ!!」
先程薬を飲んだとはいえ、傷が治ったわけではないため炭治郎の身体は悲鳴を上げた。しかしそれでも、炭治郎は必死で禰豆子に呼び掛けた。
何度も、何度も。
しかし、そんな二人に追い打ちをかけるかのように、部屋の襖が音を立てて吹き飛んだ。追いついた汐が二人を庇うようにして刀を構えると、そこから堕姫の大きな影がぬうっと姿を現した。
「よくもまぁ、やってくれたわね。そう、血鬼術も使えるの。鬼だけ燃やす奇妙な血鬼術」
堕姫の地を這うような恐ろしい声が汐の耳を穿ち、そして顔の半分と身体の一部が焼け焦げた姿で、堕姫は禰豆子を睨みつけた。
「しかもこれ、なかなか治らないわ。もの凄く癪に障る、もの凄くね」
堕姫の顔にはいくつもの青筋が浮かび、激昂しているのが一目でわかった。