第94章 バケモノ<参>
意識が鮮明になった炭治郎は、改めて周りを見渡し顔を歪ませた。建物は無残に崩れ去り、あちこちから血のにおいと血痕が見える。
そして傍らには空っぽになった霧雲杉の箱が落ちていた。
(禰豆子、汐・・・。どこだ?どこにいるんだ・・・!?)
何とか二人の姿を捜そうと上を向いた、その時だった。
――助けて・・・!助けて炭治郎!!禰豆子を助けて!!!
「えっ・・・!?」
何処からか汐の声が聞こえた気がして、炭治郎は弾かれるように立ち上がった。するとある方向から二人の血の匂いがはっきりと流れてきた。
「どうしたんだい?」
怪訝そうな顔をするまきをに、炭治郎は険しい表情のまま告げた。
「すみませんが俺はもう行きます。助けていただいてありがとうございました」
炭治郎はそれだけを言うと、風のようにその場を後にした。あれほどの怪我を追っているのにもかかわらず、あれだけの動きができることにまきをは驚いたが、遠くで泣きごとを言い出す須磨の声を耳にしたときその驚きは怒声に変わっていくのだった。