第94章 バケモノ<参>
「須磨・・・?ひょっとして、あなたたちは宇髄さんの・・・」
「はい、妻の須磨です。そしてこっちがまきをさんで・・・」
「のんきに自己紹介なんかしている場合じゃないでしょ!!ああもう!アンタは周りの怪我人の手当てをしな!!」
まきをと呼ばれた女性はすぐさま炭治郎の傷の応急手当てをし、須磨はその周辺の怪我人の手当てを始めた。
「皆さん、無事だったんですね・・・、よかった・・・」
宇髄の妻が生きていたことに安堵する炭治郎に、まきをは手を動かしながら言った。
「猪みたいな頭の子が助けてくれたんだ。後、アンタの仲間の金色のへんてこな子も生きているよ」
「伊之助が・・・、それに善逸も・・・。みんな無事でよかった・・・」
「人の事よりあんたは自分の心配をしな!全く、どいつもこいつも・・・」
まきをは唇を噛みながら、手早く炭治郎の傷に包帯を巻いていく。
それから彼の前に一粒の丸薬を差し出した。
「これを飲みな。痛み止めと造血作用のある薬だよ」
まきをが差し出した丸薬からは、すさまじい程の薬の悪臭がしたが、炭治郎は一切ためらうことなく口の中に放り込んだ。
途端に口中に強烈な苦みと渋みが広がり、炭治郎の意識は霧が晴れるように一気に引き戻された。
(うわぁぁ、あの薬ってものすごく苦くて渋いんですよね・・・)
涙目になり咳き込む炭治郎を、須磨は複雑な表情で眺めていた。