第94章 バケモノ<参>
時間は少しだけさかのぼり
『兄ちゃん、兄ちゃん助けて。姉ちゃんたちが危ないよ・・・!!』
闇の中誰かの声を聞いた気がして、炭治郎ははっと目を覚ました。だが、背中の激痛と貧血で酷い眩暈を起こして膝をつく。
(俺は・・・?そうか、あの時汐を庇って鬼に背中をやられて、それから・・・)
炭治郎はふらつきながら頭の中周りを見渡すと、汐と禰豆子の姿がない。それどころか二人の血の匂いがどこからか流れてきた。
(汐と禰豆子の血の匂い・・・!二人が血を流している・・・!行かなければ・・・、俺の大切な家族が・・・!!)
炭治郎は何とか身体を起こし、立ち上がろうとするが足に力が入らなかった。自分の見えない場所で二人の少女が血を流しながら戦っている。
それなのに男である自分が動けない不甲斐なさに、炭治郎の心に焦りが生まれた。
だが
「無理に動くんじゃないよ!」
背後から鋭い声が飛び、倒れそうになる炭治郎を誰かが支えた。視線を動かせば、黒髪に前だけが金色の髪の見知らぬ女性が自分を支えていた。
誰だと聞く前に、彼女の背後から別の悲鳴のような声が上がった。
「ヒィッ!!ひ、酷い怪我です!!ど、どうしましょう!?」
「喚くんじゃないよ須磨!さっさと手当てを始めるよ!」
女性が口にした名前に、炭治郎は思わず目を見開いた。