第11章 二つの刃<壱>
「炭治郎、炭治郎!目を覚まして!こんなところで死ぬ気か!あんたが死んだら、禰豆子はどうする!?あんたの、たった一人の家族でしょ!!?」
家族。汐にはもういない、固い絆で結ばれた家族。でも炭治郎はそうじゃない。だからこそ、死なせるわけにはいかない。
だが、炭治郎を抱えたまま鬼と戦うのはあまりにも無謀すぎる。現に刀を抜くことすらままならない。
鬼はそんな二人に嘲るような笑い声をあげながら、その腕を伸ばす。舞う土煙。炭治郎を抱えながら必死に逃げる汐。
すると、汐の願いが通じたのか、それともほかの何かが働いたのか。
炭治郎の両目が力強く開いた。
そして今度は汐を抱えたまま、横に飛んで鬼の攻撃をかわす。
「炭治郎!!」
汐はうれしさのあまり声を上げる。炭治郎も汐の姿を見て「来てくれたんだな」と、うれしそうに笑った。
炭治郎は汐からもらった布で傷を拭い、刀を構えなおす。汐も、彼と同じように鬼に向かって刀を抜いた。
反撃の刃は、ついに抜かれた。