第93章 バケモノ<弐>
(は?)
禰豆子の斬り落とされたはずの足は元通りになっており、そのあり得ない光景に堕姫は息をのんだ。
(ちょっと待ってよ、なんなの?足が再生してるんだけど。足どころか・・・なんで立ってるの?さっき体、切断したわよ。手応えがあったもの。切ったのは間違いない)
堕姫の言う通り、禰豆子の身体は先ほどの帯で真っ二つに切断したはずなのに、その体は血を流してはいるものの元通りになっていた。
それどころか次の瞬間には、血を滴らせた腕が一瞬で生えるように再生した。
その回復速度は、上弦の鬼に匹敵していた。
怒りに満ちた禰豆子はかろうじてぶら下がっていた竹の口枷を噛み砕き、身体を元より大きくして堕姫を睨みつけた。
いや、それはいつものように身体の大きさを変えただけではなかった。
全身に葉のような文様が浮かび、その頭部には一本の大きな角が生え、怒りと憎しみのこもった眼を堕姫に向けた。
その威圧感に、堕姫の身体が微かに震える。
(何、この圧迫・・・・、威圧感。急に変わった)
禰豆子は唸り声を上げながら堕姫に躍りかかると、再びその頭部に向かって足を振り上げた。
(また蹴り・・・!!)
豹変した禰豆子に一瞬たじろいだものの、先ほどと変化のない攻撃に堕姫は冷静に帯でその足を斬り落とすと、今度は禰豆子の頸めがけて帯を振るおうとした。
だが、それは背中に突如走った衝撃により中断された。