第91章 蠢く脅威<肆>
(くそ・・ったれぇ・・・!一本戻っただけでこの強さ。今は何とかしのげてるけれど、いつまでもつかわかんないわよ・・・!!)
煉獄の死からずっと、汐は大切なものを守るために強くなるために厳しい修行に耐えてきた。そしてその間の任務でも多くの鬼を倒してきた。
しかし目の前の鬼は上弦。今まで戦ってきたどの鬼よりも強く、鬼舞辻無惨に近しい存在。
柱でもない自分がどこまでもつか。そんなことを考えてきた時だった。
――前をみろ。最後まで足掻け
――女の子が本当に強くなれるのは、大切な人を守りたいという気持ちだから
誇り高き者達の言葉が汐の胸によみがえり、そして次に浮かんだのは幸せそうな眼で笑う炭治郎の顔。
(そうだ。こんなところでくたばってたまるか。あたしは、あたしは、炭治郎と禰豆子が幸せになるところを見届けたいんだ!負けてたまるか!!)
汐は渾身の力で帯を押し返し、再び爆砕歌を放とうと息を吸った。だが、その時。
――ヒノカミ神楽――
――烈日紅鏡(れつじつこうきょう)!!!
汐の周りの帯が、燃え盛る炎のような水平斬りによって真っ二つに斬られ、堕姫は思わぬ闖入者に目を見開きたじろいだ。
否、目を見開いたのは堕姫だけではなく、汐もだった。
汐の前には、黒と緑の市松模様の羽織をなびかせた、汐がこの世で最も守りたいその人。
竈門炭治郎が立っていた。