第90章 蠢く脅威<参>
「ん?嗚呼、店の中にも鬼狩りがいたのね。額に傷のある不細工な子。柱じゃなさそうね」
「っ!!」
それを聞いた汐の肩が跳ね、同時に使い魔を使うという汐の仮説は正しかったことを理解した。
「やっぱり。そうやって使い魔を放って人間を捕まえ喰っていたのね。道理で尻尾を出さないはずだわ」
「アタシはね、そんじょそこらの鬼みたいに誰でもかんでも食べるわけじゃないの。アタシが好むのは美しい者だけ。不細工と年寄りなんて喰えたものじゃない」
堕姫は得意気に言った後、帯をくねらせながら汐の顔をまじまじと見ながらねっとりとした声で言った。
「よく見ればアンタもなかなかみられる顔をしてるわね。鯉夏には劣るけれど、アンタもなかなかおいしそう。そうね、まずはアンタを三枚に下ろしてからじっくりと味わって食べてあげる」
そう言って舌なめずりをする堕姫をみて、汐は目を見開きながら吐き捨てるように言った。
「ハッ、冗談はよして?あたしがあんたなんかに簡単に喰われると思ってるの?こんな簡単な偽装工作に騙されるような婆に、誰が喰われてやるもんか」
「・・・は?」
汐の言い放った言葉に堕姫は思わず足を止め、静かな口調で言い返した。
「お前、今なんて言った?誰が何だって?」
その顔にはいくつもの血管が浮き出ており、文字通り鬼の形相で堕姫は汐を睨みつけた。
しかし汐はそんな彼女にひるむことなく、嘲るように言い放った。