第90章 蠢く脅威<参>
「100年以上も無駄に生きているから、目も耳も耄碌してるようね。炭治郎が不細工?どこがよこの老眼が。見た目でしか人の価値観を図れないような頭能天気が偉そうに語ってんじゃねえよ。この阿婆擦れ糞婆が!!」
汐の暴言が堕姫の耳に突き刺さった瞬間。堕姫はこの世のものとは思えない程の叫び声をあげ、汐に躍りかかってきた。
汐はすぐさま一歩引き、弦をはじくような音を鳴らした。
――ウタカタ・伍ノ旋律――
――爆砕歌!!!
飛び掛かってきた堕姫と帯を一瞬で吹き飛ばすが、帯はすぐさま再生し汐に向かって振り下ろされる。それを汐は感覚を研ぎ澄ませ、踊るようにして攻撃を回避した。
(見える。躱せる。戦える!!あの修行は無駄じゃなかった。蛇男のいやらし斬撃に比べたら、こんなの屁でもない!!)
「ただでさえ鯉夏を食べられなくて腹が立っているっていうのに、よくもアタシを婆呼ばわりしやがったなクソガキが!アンタを三枚に下ろして食ってやろうと思ったけどやめた。全身を滅茶苦茶に切り刻んで挽肉にしてから喰ってあげる!!」
怒り狂った堕姫が帯を振り上げ、汐の真上から一斉に落とすように襲い掛かってきた。
だが、汐はその光景を見て何かを思い出していた。
それは、少し前に行った、甘露寺の修行風景。
汐は襲い来る帯を見ながら、刀を構え大きく息を吸った。
(今ならあの技が使えるかもしれない。みっちゃんと一緒に完成させた、あの技が!!)
刀の感触を確かめるようにニ三度握りなおしてから、汐は神経を集中させた。
海の呼吸・陸ノ型――!!!
汐の口から、低い地鳴りのような大きな音があたり中に響き渡った。