第11章 二つの刃<壱>
「まただ!!まただぁ!!俺がこんなところに閉じ込められている間に!アァアアァ許さん、許さんんん!!あいつらめ、あいつらめぇ!あいつらめぇえ!!あいつらめええ!!」
その鬼は何度も何度も誰かの名前を恨めしそうに叫ぶ。あいつら誰のことだというと、鬼は興奮したまま二人の名を告げた。
「鱗滝ともう一人、|大海原というやつだァ!!」
その名を聞いた瞬間、炭治郎と汐に戦慄が走る。鱗滝は勿論だが、新たに出たもう一人の名。彼女の養父、|大海原玄海のことだろう。
炭治郎がなぜ二人の名を知っていると問うと、幾分か落ち着きを取り戻したのか鬼は少し声を落として言った。
「知っているさァ。俺を捕まえたのはその二人だからなァ。忘れもしない四十七年前。あいつらがまだ鬼狩りをしていたころだ。江戸時代、慶応の頃だった」
「鬼狩り・・・江戸時代!?」
二人が元鬼殺の剣士だったことを知らなかった炭治郎は小さくつぶやく。
だが、それを鋭い声が突如遮った。
後ろの参加者が震える声で叫ぶ。
「嘘だ!!そんなに長く生きている鬼はここにはいないはずだ!ここには、人を二、三人食った鬼しか入れていないんだ!!選別で斬られるのと、鬼は共食いをするからそれで・・・」
「でも俺はずっと生き残っている。藤の花の牢獄で、五十人は喰ったなぁ、ガキ共を」
五十人!!炭治郎と汐の脳裏に、旅立つ前に鱗滝に言われた言葉がよみがえる。
――二人とも、覚えておけ。基本的に鬼の強さは人を食った数だ。肉体を変化させ、怪しき術を使う者も出てくる
(ならこいつは、相当力の強い鬼!今のあたしたちで勝てるの・・・!?)
汐は唇をかみしめる。手が、体が震える。それは炭治郎も同じようで、刀の切っ先がわずかに震えていた。
そんな二人を嘲笑うかのように、鬼は醜い指を折り曲げながら何かを数えだした。