第90章 蠢く脅威<参>
「成程ねぇ、そういうことかい。ずいぶんと舐め腐った真似をしてくれるじゃないか、糞餓鬼が」
地を這うような悍ましい声と共に、炭治郎の前に一枚の帯状のものが現れた。
それはグネグネと気味悪くうねり、あちこちに血管のようなものが浮き出しており、目と口のようなものまである。
(鬼の匂い!でも、何か違和感がある。まさかこいつが、鬼の使い魔か!?)
帯の使い魔は、グネグネとうねりながら炭治郎達の傍ににじり寄ってきており、炭治郎は刀を向けながら背後にいる鯉夏に声を潜めながら告げた。
「鯉夏さん。俺が合図をしたら、すぐにこの部屋から逃げてください。こいつは俺がここで食い止めます」
炭治郎は吐き気を催すような匂いに耐えながら、使い魔を睨みつけた。そして、使い魔が蛇のように鎌首をもたげ、炭治郎に飛び掛かろうとした瞬間だった。
「今だ!!」
炭治郎が踏み出すと同時に、鯉夏はすぐさま襖をあけて一目散に外に飛び出した。使い魔はそれを追おうとするが、炭治郎はそれを許さなかった。
――水の呼吸・肆ノ型 打ち潮!!
炭治郎の斬撃が使い魔の攻撃を払いのけ、その勢いのまま窓枠を吹き飛ばし外へと押し出した。
「お前を鯉夏さんの下へ行かせるわけにはいかない。ここで絶対に食い止める!!」
うおおおおおおおおお!!!!!
炭治郎の咆哮が辺りに響き渡ると同時に、凄まじい音が響き渡った。