第90章 蠢く脅威<参>
「俺は、汐の強さに何度も救われ、支えられてきたんです。何度もくじけそうになった時も、いつも彼女が傍にいて俺を立ち上がらせてくれた。不安で前が見えなくなっても、吹き飛ばして前を見させてくれた。だから今度は俺が彼女を支えると決めたんです」
炭治郎の迷いない言葉に、鯉夏はにっこりと笑って彼を見た。
「彼女のことがとても大切なのね」
すると炭治郎の顔が瞬時に真っ赤になり、視線をあちこちに泳がせた。それを見た鯉夏は、先ほどの汐と同じ仕草をしていることにほほえましさを感じた。
「すみません。俺は汐の様子を見に戻ります。ですが、まだ危険が去ったわけではないので、申し訳ないのですがここから出ないでください」
「ええ、わかったわ」
「それと。俺の本当の名は炭治郎。竈門炭治郎と申します」
「炭治郎君、とても素敵な名前ね。炭治郎君、どうか気を付けて――」
鯉夏がそう言いかけた瞬間、遠くですさまじい爆発音が聞こえ店が微かに揺れた。
鯉夏は身体を震わせ、炭治郎は汐の嫌な予感が的中したことを悟った。
すぐさま汐の元に赴こうと足に力を入れたその時。突如鬼の匂いが炭治郎の鼻を突き刺した。
彼は直ぐに刀を抜き、鯉夏を背中に庇うように立つと、匂いがした方向に視線を鋭くさせた。