第90章 蠢く脅威<参>
昼間の定期連絡の後、汐は次に鯉夏が鬼に狙われる可能性が高いということを炭治郎に伝えた。
店の者や客の話を聞くと、消えた者達は皆花魁やそれに近しい位の者や、特に美しいと名高い者達ばかりであった。
それを踏まえると、今この場で一番近しいのは鯉夏だという結果になった。
そして鯉夏を守るために、汐が彼女に成りすまして鬼の隙をつくという、非常に危険な作戦を提案した。
勿論、炭治郎は最初は反対した。それは汐が囮になるということを意味し、生存率が著しく低くなるのと同じことだ。
だから最初は炭治郎が囮になり、汐が鯉夏を逃がす提案をしたが、炭治郎では体格的に難しく、何より声帯模写ができる汐の方が適任だと訴えた。
その頑なな決意に炭治郎は渋々折れ、汐に囮を任せることにした。
あの後、隊服に着替えた後に鯉夏の部屋にこっそり戻った汐は、振り返った鯉夏を当て身で気絶させると、すぐさま香を焚いて部屋に充満させた。
「炭治郎」
それから部屋の外で待機させておいた炭治郎を呼び、意識を失った鯉夏を別室に連れて行くように指示した。
「あたしはこのまま鯉夏さんに扮してしばらくいるわ。だから後のことは頼むわね」
「・・・わかった。だけど、本当に無茶だけはするな。何かあったらすぐに駆け付けるから、すぐに呼ぶんだぞ」
「ありがとう。さあ、早く鯉夏さんを連れて行って」
汐は直ぐに隊服の上から鯉夏の着物を羽織り、用意しておいた鬘をかぶり鏡の前に座り込んだ。そしてその数分後に、背後に鬼の気配を感じるのだった。