第89章 蠢く脅威<弐>
「俺たちはそのつもりで行動する。善逸も奥さんたちもきっと生きている。だから伊之助にもそのつもりで行動してほしい。そして、二人とも絶対に死なないで欲しい。それでいいか?」
炭治郎の言葉に伊之助はしばし言葉を切るが、次の瞬間には自信に満ちた声色で言った。
「お前が言ったことは全部な、今、俺が言おうとしたことだぜ!!」
(嘘くさ)
そんな彼に汐は少し呆れたように笑うが、ふとあることを思い出して炭治郎を呼んだ。
「炭治郎、ちょっといい?」
「ん?どうしたんだ?そんな顔して」
「・・・。あんたに一つ、頼みたいことがあるのよ」
汐は神妙な顔つきでそう言うと、炭治郎の耳元に唇を寄せて言った。
その言葉を聞いた炭治郎は目を見開き、微かに顔を青ざめさせた。
「それは、確かなのか?」
「ううん。だけど可能性は高いと思う。あたしの思い過ごしならいいんだけれど、もしも、万が一って言葉は決して『ありえない』ってことじゃないから」
汐の言葉に炭治郎は重々しくうなずいた。
「わかった。だけど、絶対に無理はするなよ」
「もちろん。あんたこそ、うっかり鬼に遭遇して喰われたりしないでよ」
物騒な言葉を吐く彼女に、炭治郎は引きつった顔のまま仕事に戻るのだった。