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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第11章 二つの刃<壱>


やがて鬼の体は灰のようになって消えていく。日輪刀で頸を斬った鬼は骨も残らず消滅する。
汐にとっては見覚えのある光景だが、炭治郎はそうでなかったらしく呆然とその様子を見ている。そしてそっと手を合わせる彼を見て、汐の肩が小さくはねた。

(この人は・・・どこまで優しいんだろう。自分も鬼に酷い目にあわされてるはずなのに・・・)
だが、だからこそあの美しい眼をすることができるのだろうと、汐はわかっていた。慈しみと悲しみを宿した眼。自分とは対をなす、彼の心。

「汐、大丈夫か?けがはしていないか?」
鬼への祈りを終えた炭治郎が汐の下に駆け寄る。汐は首を横に振ると、息をついた。

「まさかいきなり襲われるとはね。けれど、あたしたちは確実に力をつけてる。けれど油断はできない。もしも、万が一って言葉は決して『ありえない』ってことじゃないから」
「そうだな。それにこの山にどれくらいの鬼がいるかもわからない。気を付けよう」
二人がそう言って息をついたその瞬間。

汐の体にを痺れるような気配が、炭治郎の鼻を強烈な匂いが絡みついた。

(な、なに!?この刺すような気配!?)
汐が炭治郎の顔を見ると、彼も顔をゆがませながら鼻をつまんでいる。汐が声をかけようとすると、遠くから耳をつんざくような悲鳴が聞こえてきた。

「なんで大型の異形がいるんだよ!聞いてないこんなの!!」
どうやら他の参加者が鬼に追われているようだが、その形相が尋常じゃない程の恐怖に歪んでいる。二人はその様子をうかがおうと木の陰からそっと覗いた。その時

「「!?」」

瞬時に二人の顔に緊張が走る。炭治郎はすぐに気の陰に隠れたが、汐の体は一瞬強張り動けなくなった。そんな彼女の腕を炭治郎は慌てて引き、自分の腕の中に隠した。

ずりずりと重いものを引きずるような音がだんだんと近づいてくる。それに伴い、汐と炭治郎の心臓も早鐘のように打つ。
月にかかっていた雲が晴れると、その音の主の全貌が露になった。
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