第11章 二つの刃<壱>
「炭治郎、平気!?」
「ああ、汐のおかげで助かったよ。ありがとう」
二人は微かに笑った後、再び刀を構える。すると
「テメエエ!横取りしようとしてんじゃねえ!!」
「アア!?テメエが向こうへ行け!!あいつら二人とも俺が食う!!」
「いや貴様が失せろ!!両方とも俺の獲物だ!」
「いい加減にしろ!どちらも俺が食うにきまってる!!」
四匹の鬼が、二人をめぐって争いを始めた。その様子を眺めながら、二人は鋭く目を細める。
(いきなり複数、しかも四匹。これまで何匹か鬼は倒してきたけれど、複数との戦闘は初めてだわ。きつい、かもしれない)
心臓が早鐘のように脈打ち、口の中は乾いてくる。ここで死んでしまえば、今までの努力が水の泡だ。
だが
(それは一人だったら、の話。今のあたしは一人じゃない。炭治郎がそばにいる)
自分と同じく緊張している炭治郎の眼を、汐は見つめる。視線を感じた彼がこちらに顔を向けると、汐は小さくうなずいた。
「だったら、やることは一つだろうが。殺った方が先に食う!俺は青い髪の奴を食う!!」
「なら俺は傷のあるほうだ!!」
「ふざけるな!青髪の奴は俺のだ!」
「どちらも俺が食う!!」
――久方ぶりの人肉だ!!!
鬼たちはもう我慢の限界というように、二人に向かってその爪を振り上げた。
――全集中・海の呼吸――
――全集中・水の呼吸――
その一撃をかわし、汐と炭治郎は深く息を吸った。
――弐ノ型 波の綾!!
――肆ノ型 打ち潮!!
交差しながら放たれる二対の流れる波のような斬撃が、襲ってきた四匹の鬼の頸を綺麗に斬り落とす。
八等分にされた鬼は宙を舞い、地面に吸い込まれるように落ちていった。
(今まで何度も鬼は斬ったけど、こんなに体が動いたのは初めて。やっぱり、鍛錬は無駄じゃなかったんだ・・・)
胸にこみあげてくる何かを抑えるように、汐はぎゅっと袂を握った。