第11章 二つの刃<壱>
生き残ることを優先するため、二人はまず決まり事を作った。
夜は鬼の時間。そのためにはまず最も早く朝日が当たる場所、この山の一番東側を目指す。日が昇れば鬼は活動ができなくなるうえ、体力を回復させることもできる。
だが、一番の鉄則。それは
――二人で常に行動すること。
二人で必ず、生き残るために
二人は足並みをそろえながら、東を目指す。まずはこの夜を乗り切らなければどうにもならない。
だが、数里程進んだ後、炭治郎が鬼の匂いを感知し二人は足を止めた。
二人は背中を合わせ刀に手をかける。気配は近づいているものの、その位置が定まらない。
(どこからくる・・・?前か、後ろか、左、右?それとも・・・・)
汐は警戒心を最大限まで高め、目を皿にしてあたりを見回す。すると
「汐!上だ!!」
炭治郎が鋭く叫ぶ。その刹那、頭上から壱一匹の鬼が二人めがけてとびかかってきた。
二人はとっさにその場を飛びのき、その攻撃を回避する。土煙がもうもうと上がる中、その位置を凝視していると
「炭治郎!後ろ!!」
今度は汐が叫ぶ。炭治郎の背後から、隙をついてもう二匹の鬼が彼の顔面に爪を突き立てようとしていた。
炭治郎はとっさに刀を抜き、その攻撃を受け流す。すると、先ほどの鬼が追い打ちをかけようと迫ってくる。
「させるか!!」
汐はその間に滑り込むように入ると、そのまま刀を鞘から一気に抜きはらった。だが、その刃は鬼の胸元を切り払ったものの、弱点の頸には届かなかった。