第86章 鬼潜む花街<参>
店の中では炭治郎は額の傷がばれて大目玉を喰らったらしく、店はその話でもちきりだった。
しかし炭治郎はその代わりによく働き、たくさんのことを言いつけられてもいやな顔せず、しかも仕事も早く真面目で高評価だった。
(さすが炭治郎。家事をさせたら天下一品よね。家事は女の仕事って決めつけず、困っていたら手を差し伸べる。炭治郎と結婚する女はきっと幸せね・・・)
そんなことを考えていた汐だが、ふと胸に小さな痛みを感じた。
(あれ?あたし何考えてたんだろう。炭治郎はまだ15だし、結婚なんて。っていうか、あいつが結婚しようがしまいが、あたしには何の関係もないことでしょ・・・)
「ちょっとあんた!何ぼうっとしてるの。こっちにいらっしゃい!!」
女将に促されて、汐は化粧部屋へと連れ込まれた。あの宇髄特製の奇妙な化粧を落とし、素顔を見るためだ。
そこには数人の店の者がいて、準備はすでに整っているようだ。
汐は直ぐに座らされ、厚塗りにされた化粧を少しずつ落とされていく。そして段々と素顔が露になり、皆はその顔を覗き込んだ。
「こ、これは・・・・!!!」
皆は目を見開き、汐はその視線を余すことなく受け入れるしかなかった。