第85章 鬼潜む花街<弐>
これは青い髪がワダツミの子の証であるため、鬼に直ぐばれてしまうことを危惧してのことだったが、それだけならまだいい。
問題なのは汐も彼らと同じ【女装】をさせられていることだった。
宇髄曰く、汐はワダツミの子の特性の名残として男と間違えられやすいため、女性はともかく男性の目からでも女と認識させることが必要だということだった。
だがそれでも、この化粧の仕方はめかしつけることに疎い汐でも、許容することは難しかった。
案の定ときと屋の楼主夫妻は、汐達を見て顔をしかめ、雇うことを躊躇している。しかし、妻の方は男を見て頬を染めながら、一人だけならいいと言葉を漏らした。
「じゃあ一人頼むわ、悪ィな奥さん」
そう言葉を発したのは、銀糸の髪を下ろし、派手な化粧を落とした宇髄天元その人だった。柱の時とは全く異なる男前な風貌に、妻はうっとりとした表情をしながら言った。
「じゃあ、左から二番目の子をもらおうかね。素直そうだし」
女将の示したのは、炭治郎こと炭子。彼(彼女)は目を輝かせながら「一生懸命働きます!」と答えた。