第85章 鬼潜む花街<弐>
──吉原 遊郭。
男と女の、見栄と欲、愛情渦巻く夜の街。
遊郭・花街は、その名の通り、一つの区画で街を形成している。
ここに暮らす遊女達は、貧しさや借金などで売られてきた者が殆どで、たくさんの苦労を背負っているが、その代わり衣食住は確保され、遊女として出世できれば、裕福な家に身請けされることもあった。
中でも遊女の最高位である“花魁”は別格であり、美貌・教養・芸事、全てを身につけている特別な女性。
位の高い花魁には、簡単に会うことすらできないので、逢瀬を果たすために、男たちは競うように足繁く花街に通うのである。
人がひしめき合う街を、四人の子供を連れた男がある場所へ向かって歩いていく。そしてその場所、ときと屋と書かれた店の前で男は子供たちを楼主とそのおかみさんに見せようと立たせた。
だが、
「いやぁ、こりゃまた・・・不細工な子達だねぇ」
二人がおかしなものを見るような眼で見ている四人の子供は、顔中をおしろいで真っ白に塗ったくられ、これでもかというくらいに頬紅、口紅、眉毛をニりつぶされたお世辞にも可愛いとは言えない風貌をしていた。
炭治郎基【炭子】、善逸基【善子】、伊之助基【猪子】、汐基【汐子】の四人は、それぞれの店に禿(遊女の卵)として潜入する為、宇髄の手で変装させられたのだ。
男である炭治郎、善逸、伊之助ならまだしも、本物の女である汐はこの扱いに不服を感じており、現に汐も炭治郎達同様すさまじく下手な化粧を施されていた。
しかも、汐の一番の特徴である真っ青な髪は、同じく彼の手によって黒に近い紺色に染められていた。