第85章 鬼潜む花街<弐>
「はあ?何勘違いしてやがる――「いいや、言わせてもらおう!」
案の定宇髄は訂正しようと声を荒げるが、善逸はそれを遮り唾を飛ばしながら叫ぶように言った。
「アンタみたいな奇妙奇天烈な奴はモテないでしょうとも!!だがしかし!!鬼殺隊員である俺たちをアンタ、嫁が欲しいからって――」
「馬ァ鹿かテメェ!!俺の嫁が遊郭に潜入して鬼の情報収集に励んでんだよ!!定期連絡が途絶えたから俺も行くんだっての!」
宇髄は善逸の大声を打ち消す程の大声でそう言うと、善逸は言葉を詰まらせ、炭治郎は善逸を落ち着かせようと羽織を掴んで軽く引っ張った。
が、善逸は塵を見るような眼で宇髄を見ながら「そう言う妄想をしてらっしゃるんでしょ?」と蔑むように言い放った。
「善逸。残念だけど、この人の言っていることはおそらく本当よ。この人が結婚していることを前に聞いたことがあるから」
「え?本当?」
「ええ。例え見た目が奇天烈でいかにもろくでなしな遊び人に見えたとしても、世の中には理不尽な真実もあるものなのよ」
「お前にあるもんがありゃあ、何のためらいもなく殴り飛ばせるんだがな・・・」
汐の毒のある言葉に少し呆れつつも、宇髄は懐から何かを取り出し善逸に向かって投げつけた。
「これが鴉経由で届いた手紙だ!」
かなり強い力で投げつけられたのと、その膨大な数に善逸はたまらずひっくり返り、汐は飛んできた手紙を何とか受け止めた。
その多さに炭治郎は驚くが、伊之助は相も変わらず菓子を貪り食っていた。
「随分と多いですね。かなり長い期間、潜入されてるんですか?」
「これだけあるってことは数日数週じゃないってことでしょ?」
炭治郎と汐が手紙を眺めながらそう尋ねると、宇髄は少し首を傾けながらさも当然のように言った。