第84章 鬼潜む花街<壱>
「脳味噌爆発してんのはあんただろうが!!いい大人が子供相手に大声出してみっともない。柱が聞いて呆れるわ!」
「はっ、何とでも言いやがれ。俺は任務で女の隊員が要るから、コイツら連れていくんだよ!!“継子”じゃねぇ奴は胡蝶の許可とる必要もない!!」
「はあ!?その顔にひっついている目玉は飾りなわけ!?なほは隊員じゃないわ!隊服を着ていないでしょ!?」
汐が声を荒げると、宇髄は抱えていたなほをちらりと見ると、いらないといわんばかりに投げ落とした。
その横暴に汐は目を見開き、下に落ちたなほは炭治郎が慌てて受け止めた。
「なんてことするんだ!!」
眼を剥き出しながら激怒する炭治郎を、宇髄は冷ややかに見降ろしながら淡々と言葉を紡いだ。
「とりあえずこいつは任務に連れていく。役に立ちそうもねぇが、こんなのでも一応隊員だしな」
その言葉にアオイは青ざめ、眼が恐怖へと染まっていく。そんな彼女を見て汐は一歩踏み出し、思い切り宇髄を睨んだ。
「聞き捨てならないわ、今の言葉。さっきまでなほが隊員でなかったことを見抜けなかったくせに、よくもまあそんなことが言えるわね。人の事情にいちいち口を出すんじゃないわよ」
「そうだ!人には人の事情があるんだから、無神経につつき回さないで頂きたい!!アオイさんを返せ!!」
汐が冷静言い放ち、炭治郎が声を荒げると、宇髄は嘲るような声色で二人を見据えながら言った。
「ぬるい、ぬるいねぇ。このようなザマで地味にグダグダしているから、鬼殺隊は弱くなっていくんだろうな」
その言葉に炭治郎は一瞬言葉を詰まらせるが、それを遮るように汐の声が響いた。
「だったらあたしがアオイの代わりに行くわ」
「えっ!?」
汐の言葉を聞いていた炭治郎は、思わず声を漏らした。